仕事柄、障害のある人を取材する機会が結構多い。障害のある人も、きっと温泉は好きなはず。でも、
車いすの人が気軽に利用できる露天風呂って別 府市内にあったのかな?
そこで、車いすで温泉地を巡り、ホームページで紹介している”温泉通”の近藤秀樹さん(同市内竈)に尋ねると、
意外にも鉄輪の「ひょうたん温泉」にあるという。早速、近藤さんと一緒に訪れた。
ひょうたん温泉にある貸し切り露天風呂「睦」。閑静な雰囲気で、三〜四人の大人がゆったりと入ることができる。
駐車場から脱衣所、浴場までの間、段差がなく、手すりやマットを設置し、バリアフリーに配慮している。
「気持ちいい。普段重く感じる足も、お湯の中では自由だよ」と満足げな近藤さん。
自分でも体験してみた。十分もお湯に体を沈めていると、疲れと汗が一気に噴き出す。
「ヨッコラショ!」。掛け声とともに手すりを持つ手に力を入れ、お湯から出た。なるほど、これなら健常者にも便利だ。
ひょうたん温泉は、滝湯、蒸し湯、砂湯など数種類の温泉が楽しめる。昨年十一月には、家族湯として
貸し切り露天風呂「幕湯 順作」がオープンした。「雀」「仙人」「花」「睦」の個性的な四つの湯があり、
このうちの「睦」がバリアフリータイプ。
「大浴場は古い造りで、段差があった。お体に不自由のある人にとっては危険で、お断りすることが多かった。
せっかく遠方から来ていただいたのに申し訳なくて…」と、河野健司専務(43)が「睦」誕生の経緯を語ってくれた。
同温泉は、大正十一年、故河野順作さん(広島県出身)がリウマチを患っていた妻マツさんのために開いたのが
始まり。今でも、女湯には、マツさんのために造ったひょうたん形の温泉が残っている。露天風呂の名称も、
そんな心優しい順作さんにちなんで付けたという。
最後に大きな疑問が一つ。なぜ”ひょうたん”温泉なのか?
「それは順作さんが豊臣秀吉のファンだったからなんです」。あー、太閤秀吉の馬印は千成瓢箪(せんなりびょうたん)だ。
(記事:大分合同新聞より)